以前にもちらっとぼやきましたが、J・ル=コブ著「時代区分は本当に必要か?」を読んでていて、しんどくなってきました。
- 作者:ル=ゴフ,ジャック
- 発売日: 2016/07/26
- メディア: 単行本
以前はこの本のタイトルについてのモヤモヤを吐露しましたが、やっぱり読みにくい。
内容はいいと思います、はっきりいって面白いです。が、読みにくい。
専門書だから読みにくいというのではなく、単に文章が読みにくい。。。
いくつか例をあげます。
P.119
十九世紀になると、中世とその思想の再評価が見られるが、それでもまだエルネスト・ルナンは『イエスの生涯』(一八六三) のなかで(中略)中世についての評価は変わっていない。中世の人々とは未開人なのだ。
この段落の最後の一文はどういう意味でしょう?(ちなみにこれで一段落全部です)
この文章だけ読むと、「中世の人々とは未開人なのだ。」というのは、課題図書「時代区分は本当に必要か?」の著者であるJ・ル=コブさんの意見や主張とも取れます。
しかし、実際にはJ・ル=コブさんはこの主張に反論しようとしているので、おそらくこの文の最後の一文はエルネスト・ルナンさんの意見として書かれているのだと思います。
こういう他人の意見なのか、自分の意見なのかが非常に曖昧な記述が至るところに見られます。なので、読んでいて「え、どっちなん」と躓いてしまうのです。
また、別の例もあげます。
P.140
ヨーロッパの外の地域からもたらされる飲料や野菜は、十六世紀以降あまり普及していない。たとえば、ココアや紅茶である(それでもイギリス、オランダ、ロシアに限った話だが)。
この文は、最初に否定文がきて、つぎにその補足の文がきます。つまり意味としては否定の続きです。
ところが、最後のカッコ文もまた否定です。
これを素直に読むならば、「ココアや紅茶があまり普及しなかったのはイギリス、オランダ、ロシアに限った話だ」と読めてしまいます。
おそらく、意図はそうではなく「ココアや紅茶はイギリス、オランダ、ロシアで少し普及したが、全体として普及したとは言えない」ということだと思います。ややこしい。
これ以上、例をあげませんが、一段落中に話が変わることや、一段落中になんども否定文が現れることが多々あります。一つ一つの文は、注意深く読めば特に問題なく読めます。
ですが、全体を通してこういう感じなので、とても頭が疲れます。
これは専門書だから難解だというわけではありません。専門書であってももっと素直な記述が可能です。
J・ル=コブさんはフランスの方ですが、フランスではこういうスタイルが良いとされているんでしょうか?
と、また、ぼやいてしまいましたが、この本の内容は面白いですw
この本を読むまでJ・ル=コブさんが否定しようとする「中世は暗黒でルネサンスは光の時代だ」という考えを、私も持っていました。それがこの本を通じて、その辺りの知識を獲得できたのは良かったです。